忘れられない出来事から学んだ、薬局での向き合い方

待ち時間の中で起きた、今も忘れられない出来事。苦い経験から考えた、患者さまや周囲の方への声かけと、難しい場面への備えについてお話しします。
薬剤師として働いていると、「ありがとう」と声をかけていただいたり、医療や介護に関わる方から感謝の言葉をいただいたりすることがあります。
うれしかった出来事はたくさんあります。
一方で、今でも強く覚えている、少し苦い経験もあります。
待ち時間の中で起きた出来事
以前勤務していた薬局では、混雑すると患者さまを長くお待たせしてしまうことがありました。
ある日、来局された患者さまにも30分ほどお待ちいただくことになりました。さらに、一部のお薬をその日にすべてご用意することができず、残りは後日お届けすることになりました。
お声がけをしたとき、その患者さまは待ち時間への不満から、かなり強い口調で訴えられました。
そのとき近くには、別の患者さまと一緒に来ていた小さなお子さまがいました。大きな声に驚き、「怖い」と泣き始めてしまったのです。
私は患者さまに状況をご説明し、なんとかその場の対応を終えました。ただ、あとになって強く残ったのは、「もっと早く何かできなかっただろうか」という思いでした。
もう一声、かけられたかもしれない
振り返れば、お薬をすべてご用意できないことが分かった時点で、もっと早くお伝えすることはできたかもしれません。
「あとこれくらいお時間がかかります」
「一部は後日のお届けになります」
そうした説明を途中でもう一度していれば、受け止め方は違ったかもしれません。
また、強い口調になった時点で、そのまま待合室でお話しするのではなく、周囲への影響を考えて、場所を変えて落ち着いてお話しする方法もあったと思います。
もちろん、どこまで対応しても難しい場面はあります。
それでも、できる配慮を一つずつ考えておくことは大切だと、この経験から感じました。
「渡して終わり」にはしたくない
薬局には、体調が悪い方や、不安を抱えている方も来られます。
いつも穏やかな状況ばかりではありません。
だからこそ、患者さまが落ち着かない状態のまま、十分にお話しできずに「お薬を渡して終わり」にすることは、できるだけ避けたいと思っています。
薬剤師の仕事は、お薬を用意するだけではなく、その方がきちんと使えるように説明し、支えることだと私は考えています。
そのためには、目の前の患者さまだけでなく、待っている方、周囲にいる方、そして一緒に働くスタッフへの配慮も必要です。
難しい場面ほど、みんなで備えておく
こうした出来事を完全になくすことは難しいと思います。
だからこそ大切なのは、「起きたときにどうするか」を普段から考えておくことです。
待ち時間が長くなったときにどう声をかけるのか。
強い訴えがあったときに、誰がどのように対応するのか。
周囲の患者さまへの影響をどう小さくするのか。
そうしたことをスタッフ同士で共有しておけば、少しでも落ち着いて対応できると思います。
患者さまにも、一緒に働いてくれているスタッフにも、できるだけつらい思いをしてほしくありません。
以前の経験を忘れずに、難しい場面ほど丁寧に向き合える薬局でありたいと思っています。


