薬剤師としての仕事の見え方が変わった、ある在宅医療の経験

新卒時代、在宅医療の現場で出会った患者さまとの経験。痛みを和らげることだけではなく、「その人がどう過ごしたいか」を考えることの大切さを知りました。
薬剤師になってから印象に残っている出来事の一つに、新卒で働き始めた頃の経験があります。
当時、私は東京にある地域密着型の薬局に勤務していました。無菌調剤に取り組んだり、施設ではなく個人のお宅への在宅医療にも力を入れたりと、当時からさまざまなことに挑戦している薬局でした。
そこで私は、終末期を自宅で過ごされている患者さまに関わる機会がありました。
痛みを和らげることだけではなかった
その方は、痛みを和らげるために医療用麻薬を使用されていました。
関わった期間は、最初から最後まで一週間ほどだったと思います。その中で痛みが強くなり、医師の判断のもとで薬の量を調整していく場面がありました。
ただ、経過を見ていく中で、患者さまが眠ってしまう時間が増え、身体も思うように動かせなくなっていきました。
そこで知ったのが、その方には「最後にやりたいこと」があるということでした。
折り紙を折りたい。そして、家族に手紙を書きたい。
けれど、そのときは手が思うように動かず、眠気もあり、好きだった折り紙を折ることも、手紙を書くことも難しい状態になっていました。
患者さまが、そのことをとても悔しく、悲しく感じている様子が今でも印象に残っています。
「その人がどう過ごしたいか」を考える
その思いについて医師とも相談し、症状とのバランスを見ながら、その方が望んでいることをできるだけ大切にする方向で治療が調整されました。
そして最期を迎えるまでの間に、ご本人は折り紙を折り、家族への手紙を書くことができました。
その姿を見たとき、私は薬剤師の仕事に対する見え方が大きく変わった気がしました。
それまで私が知っていた薬剤師の仕事は、外来で処方箋を確認し、お薬を準備して患者さまへお渡しする姿が中心でした。学生時代の実習でも、ここまで生活や人生そのものに近いところで関わる経験はありませんでした。
薬を適切に使うことはもちろん大切です。
でも、その先にいる人が「どう過ごしたいのか」「何を大切にしたいのか」まで考えることも、医療に関わる仕事の一つなのだと、そのとき初めて実感しました。
求められたときに応えられる薬局へ
この経験をしたことで、「薬剤師としてもっとできることがあるのではないか」と考えるようになりました。
もちろん、今のえがお薬局で当時とまったく同じことができるかというと、設備や体制を含め、まだ整えていかなければならないことがあります。
それでも、患者さまやご家族から何かを求められたときに、「私たちにはできません」で終わるのではなく、少しでも応えられる方法を考えられる薬局でありたいと思っています。
一度にすべてをできるようにすることは難しくても、できることを一つずつ増やしていく。
新卒の頃に見せてもらったあの医療の現場は、今でも私が薬局づくりを考えるときの、一つの原点になっています。


